働き方改革はどう実行する?実現に向けての施策まとめ

近年注目を集めている働き方改革。多くの企業で長時間労働の是正に取り組んでいます。そもそも、なぜ働き方改革が必要なのか、その目的を正しく説明できる人は意外と少ないかもしれません。そこで今回は、働き方改革を実行する目的や、それによって得られるメリットについて詳しく見ていきましょう。また、さまざまな企業で行われている働き方改革の具体例もまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

働き方改革の目的とメリット

働き方改革とは、政府が主導している政策のひとつで、『人口減少にともなう労働力不足に対応すること』が主な目的です。少子高齢化が進む日本では、労働できる人の割合は減少を続けており、みずほ総合研究所が2017年5月に発表したレポート「みずほインサイト」によると、2065年、つまりあと半世紀で4割減少するとも見込まれています。このため、労働力の確保が日本にとって急務なのです。

これに対応するため、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、通称「働き方改革関連法」が定められ、働き方改革の具体的な取り組みが進められています。

では、働き方改革によってどのようなメリットが得られるのでしょうか。いくつかの実例を具体的に見ていきましょう。

生産性のアップ

働き方改革の大きな柱の1つは長時間労働を是正することです。この実現のためには、それぞれの職場での業務効率化が必要になります。簡単にいえば、残業をなくすためにはこれまでよりも少ない時間で仕事ができる工夫がいるということです。そして、この業務効率化が進めば、労働者の数は同じでもこれまで以上の成果が上げられるようになります。働き方改革はワークライフバランスの実現を目指していますが、結果として1人あたりの生産性も向上させることになるのです。

子育てや介護をしながら働ける環境作り

子育てや介護を仕事と両立させることも大きな課題です。言うまでもなく、子育てや介護は大きな負担を伴うライフイベントであり、それまでと同じように仕事を続けながらこなすことは容易ではありません。結果として、出産や育児、介護をするタイミングで退職せざるを得ないケースもあり、こうした環境では、少子化にいっそう拍車がかかるという懸念もあります。働き方改革では、長時間労働の是正やフレックスタイム制の充実によって、子育てや介護と仕事を両立できる環境の整備を目指しています。

働き方改革を進めるうえでの課題

メリットとしてすでに見たように、働き方改革には3つの大きな柱があります。「長時間労働の是正」、「待遇格差の是正」、「多様な働き方の実現」の3つです。これらの実現のためには、すでに見た業務効率化の施策以外にも職場の意識改革や取引慣行の改善が必要とされていますが、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

長時間労働の是正

長時間労働は過労死や精神的疾患につながる、健康に仕事を続けるうえでの大きなリスクです。これまで日本国内において、長時間労働が原因でうつ病を発症したり、自殺に追いやられてしまったりするケースが後を絶ちませんでした。そうでなくとも、長時間労働は業務効率を低下させ、生産性を阻害するものです。労働人口が減少する中、生産性を向上させるための取り組みとして、長時間労働の是正は必要不可欠なものです。これを達成するために政府は残業時間の上限規制、勤務間インターバル、5日間の年次有給休暇の取得を企業に義務付ける、などの取り組みを定めています。

待遇格差の是正(同一労働同一賃金)

これまで日本企業では、正社員と非正規社員において給与や賞与などの待遇格差があることが一般的でした。仮に同じ内容の業務をしていたとしても、労働者の立場によって待遇格差を設けることは決してフェアではありません。労働力の確保という面から考えても、非正規雇用者の待遇を改善し継続的な戦力として働いてもらうことは、今後も企業が生き抜いていくために重要な戦略となります。また、労働者の立場から考えても、待遇格差の是正によってより自由にキャリア形成をはかっていくことができるといえるでしょう。2020年4月からは、より規定を整備した同一労働同一賃金が施行されることが決定しています。

多様な働き方の実現

いわゆる「9時~5時」でのオフィス勤務はこれまで一般的とされていましたが、実際はこれに適さない事情のある人も多くいます。

たとえば、すでに述べたように、子育てや介護をしなければならない人は、こうした決まった時間にオフィスで働くことが容易ではありません。働き方改革では、時短勤務や後述するテレワークに関する制度を整え、促すことで、より柔軟な働き方を実現することを目的としています。労働力確保のためにも、場所や時間にとらわれずに働き続けられるような環境をつくことが大事です。

働き方改革を実現する取り組み

それでは、働き方改革を実行するにあたり、具体的にどのような施策が有効なのでしょうか。いくつかの具体的な制度について見ていきましょう。

テレワーク

テレワークとは、オフィスに通うことにとらわれないノンロケーションな働き方のことです。具体的には、オフィス以外の場所で勤務するモバイルワーク、サテライトオフィスと呼ばれる遠隔地のオフィスで働く形態が考えられます。従来はオフィスに通わないとネットワークの問題や同僚とのコミュニケーションにおける難しさがありましたが、現在では発達したICTによって遠隔地であってもオフィスと同じように働くことが可能になりました。テレワークであれば、不必要な通勤時間を削減することによってワークライフバランスを充実させることができるでしょう。子育てや介護が必要な人、あるいは営業や開発といった職種にとっても、よりよい環境づくりとしてテレワークは注目されています。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、あらかじめ決められた総労働時間のなかで、仕事の始業と終業の時間は労働者自身が自由に設定できる制度です。

短時間勤務制度

時短勤務とも呼ばれることの多い短時間勤務制度は、原則6時間を1日の労働時間と定める制度です。これは2017年に改正された育児・介護休業法によって定められており、子育てをする人も働きやすい環境を構築するのに役立ちます。対象となるのは、3歳未満の子どもを育てている労働者で、かつ1年以上の有期雇用契約、週に働く時間が2日、1日が6時間以下でないことが条件です。また、非正規労働者であっても対象となります。

休暇制度

育児休業や介護休業などの有効活用を促進することも働き方改革の重要なポイントです。そもそも育児休業や介護休業は法律によって定められているものではありますが、職場の事情などによって取得したくても取得できないケースは多いものです。

育休や介護休業を取得しやすい環境にするために、対象の従業員へ個別に声を掛けて休暇取得の意思を確認するなどの取り組みを行っている企業も存在します。

制度として定められているのに、実質的に取得できない環境にあるのでは意味がなく、積極的に休暇を取得できる環境を構築することが働き方改革の本質といえるでしょう。

長時間労働の抑制

「長時間労働を削減しよう」と声高に叫んでも、実際に行動に移すことができるケースは非常に少ないです。そこで、強制的に長時間労働を抑制するために所定の時間を過ぎるとPCがロックされる仕組みや、オフィス照明が消える、空調が消えるなどの物理的な制限を加えることに取り組んでいる企業もあります。

経団連が公表する「働き方改革事例集」では、そのひとつとして大和ハウス工業株式会社の事例が掲載されています。同社では、申請なく残業している社員のパソコンには警告を表示し、その後強制的にシャットダウンするという「ロックアウト制度」とよばれる制度を導入し、長時間労働やサービス残業を徹底的に抑制しています。

「この時間を過ぎるとPCやオフィスが使えなくなる」という制約があることによって、労働者はいかに定時内に仕事を終わらせられるか知恵を絞ります。これが定期的に行われることによって、慢性的な長時間労働を是正していくことにもつながるといえます。

物理的な制限をかけることは多少強引な方法ではありますが、これまで長時間労働の是正にさまざまな方法で取り組んできたものの効果が見られない、という場合には有効になるケースもあるでしょう。

働き方改革を正しく理解して生産性アップにつなげる

働き方改革は企業・労働者双方にとってメリットのあるものです。働き方改革の目的とメリットを正しく理解することと同時に、事例を参考にすることも自社での実践に有効でしょう。政府や経団連が取り組み事例について公開しているので、そちらも参考にしつつ自社での働き方改革を推進し、生産性アップにもつなげていきましょう。

 

参考:

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