Society5.0とデジタル・ガバメント実行計画によって社会と企業はどう変わる?

昨今、企業においてさまざまな業務が自動化され、人間の手から機械が行う作業へと徐々に移行しつつあります。こうした動きは、民間だけではなく行政でも同様です。政府は行政手続きの電子化を進める「デジタル・ガバメント実行計画」を提唱し、この実現に向けて積極的に取り組んでいます。これは新たな社会の形である「Society5.0」を実現するためにも重要な戦略といえるものです。今回は、デジタル・ガバメント実行計画およびSociety5.0とはどのようなものなのかを具体的に紹介するとともに、実現に向けた取り組みの事例もいくつか紹介していきます。

デジタル・ガバメント実行計画とは

まずは、そもそもデジタル・ガバメント実行計画とはどのようなものなのか、その定義から紹介していきましょう。

デジタル・ガバメント実行計画とは、一言で表すと「各種手続きの電子化を推進する計画」です。行政サービスを100%電子化し、利用者中心のサービスを実現することを目的としています。デジタル・ガバメント実行計画実現のための指針となるのが、デジタル化3原則と呼ばれるもので、以下3つのポイントがあります。

  1. デジタルファースト:各種手続きをオンラインで完結させる
  2. ワンスオンリー:同じ情報を2度、3度提出させることをなくす、添付書類を不要とする
  3. コネクテッド・ワンストップ:複数の手続き、サービスがどこからでも1か所で完結できる

Society5.0とは

デジタル・ガバメント実行計画によって手続きが電子化・自動化すると、さまざまな申請を行う際に手間が減ることになります。これは単に作業の手間が減るというだけではなく、その先にある社会そのものの仕組みも一変させることにもつながるものです。

政府は新たな社会の基盤作りとして「Society5.0」を推進しています。内閣府によるとSociety5.0とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されています。5.0とあるのは、狩猟~農耕~工業~情報という社会をそれぞれSociety1.0から4.0と定義し、これに続くものとしているからです。

これまで日本は情報化が進み、あらゆる場面でライフスタイルが一変しました。自動車の運転を例に挙げると、従来の紙に印刷された地図はカーナビに、さらに近年ではスマートフォンによって代替させるようになりました。そして、この先には自動運転技術の進化が待っています。自動運転がこれまでのデバイスの進化と決定的に異なるのは、カーナビやスマートフォンは「人間」が情報を獲得するための手段であったのに対し、自動運転は、機械や情報機器など「モノ同士」の自律的なやり取りによって実行されるという点です。

Society5.0とはまさにこの考え方と同じで、人間の手を介すことなくテクノロジーによって自律的な処理を可能にするものです。これを担うのがIoTとAI、ビッグデータといった技術です。Society5.0を社会に広く浸透させ、これを達成するためには行政の分野も例外ではありません。このため、デジタル・ガバメント実行計画は必要不可欠なものなのです。また、デジタル・ガバメント実行計画の指針であるデジタル化3原則は、IoTやAIの技術を応用して初めて実現できるものでもあります。

デジタル・ガバメント実行計画に向けた取り組み

手続きや申請の電子化であるデジタル・ガバメント実行計画ですが、具体的に国や自治体ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。今回は実際に実現または検討段階に入っているものを3つ紹介します。

子育てワンストップサービス

政府は2017年7月から、マイナンバーカードによる「子育てワンストップサービス」を提供しています。これは児童手当のオンライン申請、保育施設の利用申込、妊娠の届出などについてすべてオンラインで行えるというサービスです。児童手当の受給資格や金額などについても、プッシュ通知での「お知らせ機能」を利用できます。

介護ワンストップサービス

介護ワンストップサービスは政府が今後導入を予定している仕組みです。介護支援認定の申請、介護のための住宅改修費の支給申請などをオンライン化する予定で、2019年3月時点で約40の自治体が登録しています。今後準備が進んでいけば、さらに対象の自治体も増えてくると考えられます。

引越しワンストップサービス

引越しワンストップサービスは、引越しの際に忘れがちな住所変更や公共料金の各種手続への案内・誘導機能を備えた引越し手続ポータルです。ポータルサイト自体は民間事業者が提供することを前提としており、オンラインでの事前申請を可能にすることによって、役所における窓口での手続きを簡素化するとしています。

Society5.0によって企業と社会はどのように変わる?

デジタル・ガバメント実行計画の先にあるSociety5.0。これが現実のものとなったとき、社会や企業のあり方は大きく変わると考えられています。具体的にどのような変化が起こり、影響を与えることになるのでしょうか。いくつか具体例を挙げながら考えていきましょう。

インターネットによる産業革命が起こる

AIやIoTが生活に密着したSociety5.0の社会が到来すると、あらゆる産業がITをベースに再定義されることになります。インターネットのあり方も、これまでのようなパソコンやスマートフォンからアクセスして情報収集をするツールとしてだけでなく、人とモノや、モノ同士をつなげる役割まで広がってきています。この役割によって多くの産業のあり方が変わる可能性があります。

例えば、建設業の場合、橋や鉄塔などの点検は高所に作業員が登って目視で確認するということが主流でしたが、Society5.0の社会が到来するとドローンが巡回して高性能のカメラで撮影、その画像をAIが瞬時に判断して異常の有無を検知するといったことも可能になります。

このように、これまでは一見インターネットとは無縁と思われてきた業種や、人間による判断が必須だと思われてきた業務においても、テクノロジーを駆使したビジネスモデルへの変革が促されるのです。

スマートシティの実現

Society5.0の実現にあたって注目されているのが、スマートシティです。政府はこれを「Society5.0の先行的な社会実装の場」としており、構築に向けて具体的な取り組みを行っています。スマートシティとは、交通やライフライン、自治体のサービスなどをテクノロジーの力によって最適化した、持続可能な都市のことです。都市への人口集中によって引き起こされるさまざまな問題を解決する形として、日本だけではなく世界的に次世代型のスマートシティへの転換が図られています。

大都市の問題のひとつに交通渋滞がありますが、AIによって渋滞予測が可能になると、どの場所のルートを通るのがもっとも影響が少ないかを割り出すこともできるでしょう。また、そもそも自動運転技術が発達することによって、自動車が最適な運行ルートを選定するため慢性的な渋滞がなくなる可能性もあります。

このように、都市のあらゆるデータを活用して課題解決を図っていくことは、まさにSociety5.0が目指すものなのです。こうした取り組みがより進んでいけば、技術を組み合わせた新たなビジネスが続々と誕生することも考えられるでしょう。

デジタル・ガバメント実行計画とSociety5.0によって変革する社会

今回紹介してきたようなデジタル・ガバメント実行計画が実現されると、私たちの生活はより便利なものになります。引越しや出産をはじめとした、さまざまな行政手続きが簡略化され、役所の窓口に長時間並ぶ必要もなくなるはずです。政府はSociety5.0実現に向けてデジタル・ガバメント実行計画を含めた多くの取り組みを推進しています。IoTやAIによって実現される、これまでは考えられなかったような社会「Society5.0」の実現は、実はそれほど先のことではないのかもしれません。

 

参考:

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