さまざまな業界で進むRPA導入、成功事例と失敗しないための注意点

働き方改革の一環で、職場の生産性向上が期待されています。その中で注目されているものの一つがRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)です。その名の通り、ロボットに人間の行っている作業を代替してもらうことで、労働時間を短縮したり、ヒューマンエラーをなくしたりすることができます。一方でただ導入すればうまくいくというわけではなく、方法によっては業務の生産性を上げられないこともあります。そこで今回は、導入の成功事例をもとに、どのようにRPA導入を進めていけばよいか、見ていきましょう。

メガバンクでの成功事例

RPA導入はさまざまな企業で進んでおり、成功事例もあれば失敗事例もあります。はじめに、事業規模が大きくRPA導入によって大きく作業時間やコストが削減されたメガバンクの事例をご紹介します。

単純作業から社員を解放した

あるメガバンクでは、グループ全体でRPAの導入を進め、計2万時間の作業時間を削減しました。銀行にはまだ手作業の業務が多く残されています。数百・数千ものデータを処理したり、プロセスが連続するため複雑になっている作業をミスなく進めたりすることは人間にとっては負担が大きい作業です。しかし、RPAなら、これを素早く、またミスを起こすことなく進めることができます。社員がこういった単純作業から解放されることで、他の仕事に時間を割くことができるようになり、生産性が向上します。

低予算で検証ができた
一般的にシステムを改修する場合、システム周辺の影響を調査したり対応したりと、時間も費用もかかってしまいます。特に求められる水準の高い金融機関のシステムについては、ほんの小さな変更でも数億円規模の費用で数年単位の時間がかかってしまうこともあります。しかし、RPAツールであれば、数百万円という予算で導入ができ、手軽に検証を行ってすぐに本番環境へ適用することができます。また、メガバンクに代表される規模の大きな組織では、施策を進めるうえで承認をとるというプロセスに時間がかかることが多くあります。初期検討を低予算で始められるという、コスト面での説得材料ができるというのは嬉しい点といえます。

大量データを扱う部門で力を発揮

金融機関で高い重要性を有するコンプライアンス部門では、さまざまなデータや記録にアクセスし、証跡を残すことが必要とされます。何度も同じログインやデータ移動といった作業が発生する領域です。このメガバンクでは、コンプライアンス部門にRPAツールを導入し、人間によって判断して進めなければならないと考えられていた業務を自動化しました。当初は半信半疑だった部門も、検証で実際に使ってみることでその便利さを知り、1年後には実際の業務で利用され始めました。

RPA導入が失敗するとき

一方、一気に脚光を浴びるRPAツールは、現在さまざまな企業が導入を検討しており、ブームともいえるほどの様相を呈しています。しかし、導入しさえすれば業務を自動化できる、大幅にコストを削減できる、というわけではありません。いち早くRPAを導入したものの、期待したほどの効果が得られず落胆することも。どんな時にRPA導入は失敗してしまうのでしょうか。

RPAありきで考えてしまう時

RPAはあくまでもツールであり、導入することが目的ではありません。RPAさえ導入すれば業務が効率化できる、コストが削減できる、というわけではありません。組織全体の方針や、戦略を把握しながら十分に検討を進めることが必要です。RPAありきで考え始めるのではなく、まずゴールを定め、その上で業務自動化の方針を考え、適切だと判断できたらRPA導入を検討することが必要です。検討の中では、既存のシステムやツールのどこまでを対象とするか、保守や運用を外注するのか内製化するのか、といった観点も出てきますので、自社の状況と適正を判断することが重要です。

特定の部門だけで導入を考えてしまう時

部門単位でRPAを導入して結果が出せることもありますが、やはり複数部門でばらばらにRPAを導入すると無駄も多く発生します。初めに全社レベルで検討を進めておくと、効率の良い導入ができるようになります。合わせて、全社レベルでロボットを管理することで、システムのセキュリティ面でも良い効果があります。パスワードの管理や誰が管理者になるかなど、会社で使ううえできちんと決めておかなくては問題が発生しうる面が多くあります。また、RPAが操作するシステムは常に同じというわけではなく、変化するものです。急な変更に対応できないロボットだからこそ、それを動かせる管理部門との連携も大切になります。

さまざまな業界で進むRPA導入

先にメガバンクの事例を紹介しましたが、RPAツールが導入され効果を挙げているのは特定の分野に限りません。金融業界に加えて、製造業、また地方自治体などでも積極的に導入を進め、それぞれ投資効果を見出し始めています。業界ごとの導入事例を見ていきましょう。

卸先企業のデータ処理を自動化(食品メーカー)

ある食品メーカーでは、卸売業者のPOSデータ収集を行うため、日々ルーティン作業が発生していました。単純作業ではあるものの、直接取引先に提示される資料であるために正確さが求められ、負担のかかる業務でした。RPAを導入したことで、それまで1件20分かかっていた作業が5分に短縮され、対応時間を削減することができるようになったのです。繰り返しの複雑な工程をミスなく進めるということはRPAツールの得意分野ですから、「ミスなく進めなければいけない」というプレッシャーから社員を解放した、という意味でも効果があったといえる導入事例です。

年間1100万円のコスト削減を実現(飲料メーカー)

ある飲料メーカーでは、データのダウンロード作業をRPAで自動化しました。それまでは1度に160回ものダウンロード作業が求められ、繰り返しの作業に社員も疲弊していました。しかしRPAを導入したことで、年間の事務コストがなんと1100万円も削減されたというのです。導入にかかったコストが、1ヶ月で回収できたというのですから、導入を渋っている部門にとっては朗報といえるのではないでしょうか。メガバンクの事例でご紹介したように、他の施策に比べて初めの投資が少なく済むので、回収までの期間も短くできるのかもしれません。

源泉徴収管理を自動化(自治体)

RPAを導入して業務を効率化しているのは民間企業だけではありません。自治体でも続々と導入が進んでいるのです。ある自治体では、源泉徴収票の管理システムにRPAを導入すれば、年間444人分の業務が削減できることがわかり、導入を決定しました。444人分と考えると、人件費の削減効果だけでも莫大なものだと想像できます。また複雑な事務作業である源泉徴収管理では事務ミスも発生していたようですが、RPA導入によりミスも削減でき、全体として生産性を向上させることができました。

業務を「見える化」して、効果的なRPA導入を

RPAを導入することで、煩雑な事務作業や繰り返しの単純作業から解放されることがわかりました。同時に、RPAありきで改善方法を考えても、うまくはいかないこともわかりました。まずは職場の業務の洗い出しをして、可視化とどのような順序で改善を行っていくのがよいか、どこにRPAをあてはめると効果が出るか、RPAの特性や導入事例をもとに考える必要があります。今回ご紹介したような事例を参考にすると、初期投資をしてもどのくらいの期間で回収できるか、シミュレーションを立てて検討を進めることで、社内を説得したりすることができるかもしれません。

 

参考:

関連記事