軽減税率がやってくる! あらゆる企業に関係する対象品目の基礎と3つの対応方法

2019年10月1日、消費税率が8%から10%に引き上げられます。これに合わせて導入される軽減税率は、日本では初めての試みです。これまで消費税率は3%から5%、そして8%と2度、増税を経験しているため、企業としての対応もそれほど大きな混乱を招くことはなかったでしょう。しかし、初めての経験である軽減税率に関しては、どういった対応をするべきか苦慮している企業も多いのではないでしょうか。そこで今回は、そもそも軽減税率とはどういったものなのか、軽減税率が企業にどういった影響を与えるのかについて考察していきます。

消費税増税に伴い導入される軽減税率の概要

軽減税率とは、消費税増税に伴う低所得者への配慮の観点から、「酒類・外食を除く飲食料品」、「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」を対象に導入される制度です。これにより2019年10月1日からの消費税率は次のようになります。

 

軽減税率

標準税率

消費税率

6.24%

7.8%

地方消費税率

1.76%
(消費税額の22/78)

2.2%
(消費税額の22/78)

合計

8.0%

10.0%

 

軽減税率の具体的な対象品目

軽減税率が適用されるものとして、「酒類・外食を除く飲食料品」、「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」と前述しましたが、特に「酒類・外食を除く飲食料品」に関しては非常に細かな分類がされています。具体的には次の通りです。

  • 酒類・外食を除く飲食料品

飲食料品とは、酒類を除く食品表示法に規定する食品を指します。基本的には「医薬品」「医薬部外品及び再生医療等製品」を含まないすべての食品が対象です。ちなみに、酒類とはアルコール度数が1%以上のものという定義があります。そのため、調味料である「みりん」はアルコール度数が1%以上で酒類ですが、「みりん風調味料」は1%未満のため軽減税率の対象になります。

また、包装材料や容器が飲食料品の販売に通常必要である、と判断されれば軽減税率の対象となります。これはどういうことかというと、贈答品のように包装に別料金が定められている場合には、軽減税率の対象外となるということです。例えば、プレゼント用に紅茶を買ったとして、紅茶には8%が、包装料金には10%の税率が適用されます。ただし、この紅茶がティーカップとセットになっている場合には、少し注意が必要になります。雑貨と飲食料品が混在しているためです。このようなものを一体資産といい、1万円以下の少額のもので(税抜額)価格のうち食品の占める割合が3分の2以上であれば、全体が軽減税率の対象とされています。

加えて、外食とケータリングなどが飲食料品から除外されていることも注意が必要でしょう。レストランや居酒屋などで外食をした場合は対象外ですが、そこでお土産として飲食物を購入、持ち帰った場合は軽減税率の対象となるのです。さらに細かいのは宅配の場合で、宅配はテイクアウトと同様に軽減税率の対象ですが、宅配サービスを受けても自宅で調理をしてもらうケータリングのようなケースは外食と同じ扱いとなり、軽減税率の対象外になります。

  • 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞

軽減税率の対象となる新聞は、一定の題号で政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載していて、週2回以上発行されるものです。ただし、軽減税率の対象となるのは紙で発行されているものに限定されていて、電子版の新聞は軽減税率の対象外になります。

軽減税率が企業に与える影響

軽減税率は対象品目が飲食料品や新聞のため、飲食業や新聞を扱う小売店などにしか影響がないと思われている方は多いのではないでしょうか。しかし、実際には業種にかかわらず企業は軽減税率の影響を受けるといえます。

というのも、企業としてお中元やお歳暮、移転祝いなどで食料品を購入した際の経費、社内で決起集会やパーティーを行った際に購入する食料品などには経理上、軽減税率が関わってくるからです。

例えば、ある企業が貸し会議室を利用してセミナーを開催したとします。ここで来場者の人数に合わせて水やお茶を用意した場合、貸し会議室の利用料にかかる消費税は10%ですが、来場者に用意した飲料水にかかる消費税は8%になります。また、セミナー後の懇親会でオードブルの配達を頼む場合にかかる消費税は8%ですが、調理や配膳を含んだケータリングがあれば、その分は10%で計算しなくてはなりません。

これらの手配をすべて代理店に依頼した場合、請求書で消費税率は区分されているかの細かなチェックが必要になります。そして、それぞれの税率に合わせて別に記帳しなくてはなりません。また、会計システムで対応しているのであれば、新税率に合わせた改修も必要になるでしょう。こうしたこれまでにはなかった手間やコストは、ほぼすべての企業でかかることになるのです。

軽減税率導入に際し企業としてやるべき対策

あらゆる業種の企業に影響が及ぶと予測される軽減税率ですが、その影響を最小限におさえるために企業ができることはあるのでしょうか? 以下に3つの対策をご紹介します。

1. 経理・財務担当者を中心に軽減税率に関する講習会を行う

10月1日以降は8%と10%それぞれの税率に合わせた記帳を行う必要があります。手作業で記帳している企業はもちろん、システムで自動化している企業であっても経理・財務担当者の知識が追い付いていなければ対応ができません。そこで改修されたシステムの使い方、税率別の記帳方法などを事前に講習会を行い教育していく必要があります。

2. 経費の内訳を明確にする

軽減税率導入に対するルール策定をします。例えば、取引先に手土産として贈答品を持参する場合、これまで何を購入しても交際費で計上し、消費税を一律で計算していました。しかし、これからは洋菓子であれば8%、ワインであれば10%と消費税率が異なるため、何を購入したかまで明確に申告するルールを策定することが重要です。そうすることで記帳の際に間違いが生じてしまうケースがなくなります。

3. 中小企業庁が行っている中小企業向けシステム改修の補助金制度申請を検討する

中小企業庁では、軽減税率導入に際し、複数税率対応レジや券売機の導入や改修、受発注システム、請求書管理システムの改修などに要する経費の一部を補助する軽減税率対策補助金を実施しています。システム改修を予定している場合、この制度を活用することでコスト削減効果がありますので、検討するとよいでしょう。

軽減税率導入において企業は正しい理解と迅速な対応が重要

「うちは飲食業ではないから関係ない……」。軽減税率の影響について、こんな風にとらえている企業もあることでしょう。しかし、どういった業種であれ、軽減税率の影響をまったく受けない企業はないといってよいでしょう。

これまで会議費、交際費などで一律の記帳をしていたものも、そこに飲食物が関われば消費税率は8%と10%が混在することになるため、それぞれの税率ごとの記帳が求められます。これは経理・財務担当者に関連することですが、そうした部門のみならず軽減税率に対する正しい知識をつけることが、実施後の混乱を防ぐためには重要といえるでしょう。

参考

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