いま一度知りたい、残業時間の定義と割増賃金の考え方

昨今、残業時間を減らすことが推奨されています。必要な分だけ残業をしたいし、残業をするならそれに見合うだけの賃金を受け取りたいと考える方が多いのではないでしょうか。しかし残業時間の考え方というのは案外複雑です。ここではいま一度、残業時間の考え方をおさらいしてみましょう。そして、その残業時間をどのようにして減らすことができるかを考えていきましょう。

労働基準法で定める「残業」の定義とは

頻度や長さは人によって違うものの、多くの方にとって身近な言葉といえる残業。なんとなく定時以降まで働くことを指すようにイメージしますが、正確な定義についてはなかなか知る機会がありません。残業時間、そしてその計算のもとになる労働時間の考え方について再度おさらいしてみましょう。

労働時間とは、指揮命令下に置かれている時間

残業を考えるうえで、労働時間の定義から考える必要があります。労働時間は一般的に、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。つまり実際に労働に従事している時間だけではありません。例えば朝、制服に着替える時間や昼休み、定時前に清掃を行うよう指示されていたり、上司の指示で研修に参加したりする時間は労働時間に該当します。

事業場外の労働や専門性が高い場合にはみなし労働が適用される

しかし、この労働時間の考え方には例外もあります。例えば外回りの営業などの場合は、使用者が具体的な指揮監督を行ったり、労働時間を算定したりすることが難しい場合があります。この場合、一定時間労働したものとみなして労務管理を行うことができるケースがあります。また業務内容によってもこのみなし労働の考え方が適用される場合があります。例えば、デザイン設計や研究開発など特定の専門職についてはその仕事内容からみなし労働とされることもあります。ホワイトカラーの職でいえば、経営企画などの企画業務職などでみなし労働が適用されることもあるようです。

自分に適用されている制度を確認しよう

みなし労働以外にも、繁忙期には多く働き閑散期には少なく働く変形労働時間制や、必ず勤務すべき時間帯と、いつ出勤および退勤をしてもいい時間帯とに分けられているフレックスタイム制など、さまざまな労働形態が生まれています。労働時間を画一的に定めない方が業務効率を上げられる、など業務特性などに応じてより良い方法が選択されているはずです。労働時間や残業時間をきちんと計算するためにも、まずは自分に適用されている制度を確認しましょう。

残業時間と賃金、正しく計算されていますか

残業をした時、一律に時間給の25%の割増賃金が払われると考えられる方も多いかもしれません。しかし、実際には出勤するタイミングなどによって割増賃金も異なります。これまで自分は正しい割増賃金を受け取っているか、残業時間を正しく計算できているか、振り返ってみましょう。

法内残業と法定時間外労働

労働基準法では1日8時間以内、かつ1週間40時間以内というルールで法定労働時間が決められています。この時間を超えて行われた労働のことを法定時間外労働というのです。これが一般的に残業と呼ばれているものにあたります。加えて、所定労働時間を超えて法定労働時間内に働いた場合、例えば定時通りだと7時間の勤務時間がある会社で8時間働いた場合には、法内残業と呼ばれる扱いになります。この法内残業の場合には、会社の規定によって異なるものの、割増賃金が支払われない場合もあります。

残業時間・残業代はこう計算する

残業代を計算するうえでは所定労働時間内での1時間あたりの賃金、時給が基準になります。法定時間外労働を行った場合には、時間内労働の時より25%割増された時給で計算した賃金を支払わなければなりません。これがいわゆる残業代といわれるものです。年間の所定労働日数を12ヶ月で割ることで、1ヶ月に何日働くことになるかが算出されます。それをもとに1日あたり・1時間あたりの賃金が算出されます。それを基準に25%増し、つまり1.25倍された額が1時間あたりの残業代です。

深夜や休日の残業は賃金割増率が変わる

加えて、条件によって様々な割増賃金が追加されます。1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合には、時給が50%割増されたり、午後10時以降の深夜に労働した場合にも時給が50%割増されたりします。休日出勤の場合は35% 割増になりますから、休日に深夜労働を行った場合には35+25で時給の60%の割増賃金が支払われることになります。

残業を少しでも減らしていくためには(運送業界の事例)

時期によって業務の繁閑があり、人員不足も問題になっている運送業界で、時間外労働の削減に取り組んだ事例があります。お客様を相手にするからこそ、労働時間の管理が難しくなる側面もありますが、どのように調整しているのでしょうか。

残業の事前申請と管理を行う

管理者が主導し、始業前と終業後に残業予定者の業務内容と退社時間を確認しています。内容によっては翌日に行うよう指示したり、他の社員へ割り振ったりといった調整を行っています。管理を労働者自身に任せていると、お金欲しさに残業を行ったり、うまく他の人の助けを得られず一人で仕事を抱え込んでしまったりという問題が起きますが、管理職が主導することで適切な管理が行えるようになります。

顧客を巻き込んだ業務効率化

お客様からの要望があれば、たとえ時間外であれ対応しなくてはならないというのが、多くの企業での常といえます。しかし、自社のコストが増えることで、その収入源となっているお客様の支払額も増大します。自社の業務効率を図りコストを削減することは、お客様にとってもメリットだといえます。この考え方から、例えばお客様とやりとりする書類については、お客様と自社とで様式を統一するように依頼しているようです。ほんの小さなルールですが、様式が揃っていれば内容確認や整理にかかる時間が削減できます。自社だけでなくお客様企業も巻き込んだ改善を行うことで、双方の時間外労働削減を図っています。

有識者を増やして業務を平準化

どんな職場でも、仕事が得意だったり詳しかったりすると、その人にばかり仕事が集中してしまうことがあります。こうした状況は本人の長時間労働につながり、また職場でのスキルシェアという意味でも適切ではありません。当該事例企業では有識者を増やすため、各職場で必要とされる技術や能力、資格や免許などを整理し、必要な教育や人材の配置換えを計画的に実施しています。その仕事をできる人が増えれば、業務量の多くなっている社員がいても、他の従業員への仕事振り分けなどができるようになります。

正しく制度を知り、適切な残業時間で働いて妥当な割増賃金を受け取ろう

定時外であっても8時間を超えて働いているか否か、深夜や休日かによって残業の枠が変わることがわかりました。また、職種や業種によって、労働時間の考え方が一部異なることがあることもわかりました。自分が正しく労働時間を計算され、割増賃金を受け取ることができているでしょうか。RPAをはじめとするIT設備導入や業務可視化など、どのような方法をとることで残業を減らしていくことができるでしょうか。仕事であれプライベートであれ、自分の人生を充実させていくうえで、きっとプラスに働く考え方でしょう。

 

参考:

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