ジョブ型雇用のメリット・デメリット 導入を阻む3つの壁

ジョブ型雇用のメリット・デメリット 導入を阻む3つの壁

DXの推進や働き方改革、そして新型コロナウイルスの感染拡大など、さまざまな要因が重なり、日本の企業における働き方が大きく変わりつつあります。終身雇用制度や年功序列による賃金体系も一般的なものではなくなりつつあり、代わりに注目されているのがジョブ型雇用です。

今回の記事では、ジョブ型雇用のメリット・デメリットについて詳しく解説するとともに、日本においてジョブ型雇用の導入が進まない理由とその解決策もあわせて解説します。

そもそもジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用という言葉を耳にしたことはあっても、従来の雇用方法とどのような違いがあるのか明確に理解できている方は少ないのではないでしょうか。そこで、ジョブ型雇用の定義を紹介するとともに、メンバーシップ型雇用との違いや、なぜ今になってジョブ型雇用が注目されるようになったのかについても詳しく解説します。

ジョブ型雇用とは? メンバーシップ型雇用との違い

ジョブ型雇用とは、仕事内容に合わせてスキルを持った人材を採用する方法のことを指します。

多くの日本企業では、例えばある企業に新卒で入社した後、営業や総務、技術部門など、さまざまな部署に配属先が変わり、多様な経験を積みながらキャリアアップしていくのが一般的です。このような方法をメンバーシップ型雇用と呼び、ジョブ型雇用とは対極の考え方といえます。

日本企業において一般的なメンバーシップ型雇用に対し、欧米企業の多くではジョブ型雇用が採用されています。ジョブ型雇用では、例えば「経理担当者」として入社した社員は、経理のプロフェッショナルとして長期にわたって活躍していく働き方が一般的です。メンバーシップ型雇用のように、数年おきに配属先や職務内容が変わるような人事は稀であり、1つの部門で同じ職種を長年経験します。

日本でジョブ型雇用が注目されるようになった理由

これまでの日本企業ではメンバーシップ型雇用が定番であったにもかかわらず、なぜ今になってジョブ型雇用が注目されるようになったのでしょうか。その背景として、終身雇用制度が崩壊しつつあることが指摘されています。

メンバーシップ型雇用は、社員に対してさまざまな経験を積ませるために、数十年といった長いスパンで人材教育をしなければなりません。そのため、メンバーシップ型雇用を実現するためには長期的な雇用が大前提にあり、終身雇用制度や年功序列制度と極めて関連が深いものなのです。

しかし、これらの人事制度はすでに一般的なものではなくなりつつあります。経団連や一部の大企業トップが「終身雇用制度の維持は難しい」と発言し注目されましたが、今後の日本企業は終身雇用制度の運用が難しくなり、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へシフトしていくのではないかと考えられているのです。

ジョブ型雇用のメリット・デメリット

従来のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行することにより、企業にとってどのようなメリット・デメリットが考えられるのでしょうか。それぞれのポイントに分けて詳しく解説します。

メリット

  • 専門性の高い人材をアサインできる

エンジニアや財務・経理担当者など、専門的なスキルが求められる人材はメンバーシップ型雇用でも採用できます。しかし、採用される側にとっては、はじめは希望する職種として採用されても、その後配属先が変わるのではないかといった心配があります。

ジョブ型雇用として採用するのであれば、あらかじめ職種が指定されているため、求職者にとっては好条件となり専門的なスキルを持った優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

  • 事業のイノベーションにつながる

複数の部署でジョブ型雇用が一般化すれば、社内に高いスキルを持ったプロフェッショナルが集まり、豊富な知識や知見を出し合うことができます。専門性が高い人材が集まるということは、新たな事業創出やイノベーションにつながる可能性も高まるでしょう。

デメリット

  • 業務が属人化される

ジョブ型雇用は専門性の高い人材に特定の業務を任せることになるため、業務が属人化する可能性が考えられます。数年単位でさまざまな部署、職種を経験させるメンバーシップ型雇用では、オールマイティーな社員を育成できますが、ジョブ型雇用では万が一社員が抜けてしまうと業務が回らなくなることもあるでしょう。

  • チームワークが低下する懸念がある

ジョブ型雇用では社員がそれぞれ自分自身の仕事に専念するため、チームとして業務を回すという意識が希薄になることも考えられます。これは業務内容や社員個人の考え方、社風によっても異なりますが、チームワークを醸成する施策を検討・実施する必要があります。

ジョブ型雇用の普及を阻む要因

徐々にジョブ型雇用が注目されはじめているとはいえ、多くの企業に浸透するにはさまざまな障壁があることも事実です。具体的にどのような要因が考えられるのか、今回は3つのポイントに分けて解説します。

業務を細かく分けられない

民間の調査会社が経営者に対してアンケートをとったところ、ジョブ型雇用への移行が困難な理由として「業務を細かく分けられない」という意見がもっとも多いことが分かりました。ある社員が専門的な業務を含む複数の業務に従事しているケースも多く、ジョブ型雇用に移行しようにも業務の切り分けや細分化、定義付けが難しく、なかなか踏み切れないことも多いようです。

業務が属人化している

特定の社員のみが業務を担っており、そのほかの社員では対応できず業務が属人化しているケースもあります。極めて専門性が高く、特定の資格や能力を持っている社員でなければ対応できない業務ほど、属人化する傾向は高いでしょう。

しかし、多くの企業ではそのような理由よりも、独自のルールやプロセスが根付き、特定の社員以外は対応が難しいという社内体制の問題が挙げられます。

社員からの反発

終身雇用や年功序列制度が前提として成り立っていたメンバーシップ型雇用から、ジョブ型雇用へ切り替える過程において、労働条件が大幅に変更されることで雇用に不安を抱く社員からの反発も予想されます。

ジョブ型雇用の問題を解決するために

ジョブ型雇用における問題や障壁をクリアするためには、どのような対策が求められるのでしょうか。上記で紹介した3つの課題に対応したポイントをそれぞれ解説します。

業務の可視化

社員が対応している業務があまりにも広く、細分化できない場合には、業務内容を可視化することから始めてみましょう。業務マニュアルがない場合には、社員が普段行っている業務内容をヒアリングし、フローチャートや文章として見える化すると分かりやすいはずです。

業務を可視化することによって、広範囲かつ複雑な業務も切り分けられるようになり、細分化したうえで可視化するとジョブ型雇用への移行がしやすくなります。

業務プロセスの整備と標準化

業務の属人化をクリアするためには、特定の社員のみが行ってきた独自のプロセスやルールを見直し、複数の社員や部署で対応できるよう業務プロセスを整備し標準化しましょう。これにより、専門的なスキルや能力が求められる業務と、それ以外の業務のプロセスを分けて考えることができます。

社員に対する説明

社員からの反発に対する課題としては、人事制度を根本から変更することになるため、導入にあたっては新規採用する社員のみ、または移行期間を設けるなどの措置が必要です。

また、例えばグローバル化する競争社会で勝ち残っていくためにはジョブ型雇用が必要であるといった形で、導入する理由や経緯も丁寧に説明しなければなりません。

自社にとって最適な雇用方法を選択しよう

企業に対してイノベーションが求められていると同時に、働き方改革によって社員の意識も変わりつつあります。従来のメンバーシップ型雇用は、さまざまな部署で多様な経験を積めるというメリットがありましたが、社会の変化に伴いジョブ型雇用への注目度が増しています。

ただし、ジョブ型雇用にもデメリットがあり、すべての企業にとって適しているとはいえないのも事実です。自社にとってどちらの方法が適しているのかを見極めたうえで、必要な対策を講じていくことが重要といえるでしょう。

関連記事