脱ハンコとDXにはどんな関連がある?政府が推進する目的と狙いについても解説

脱ハンコとDXにはどんな関連がある?政府が推進する目的と狙いについても解説

コロナ禍におけるテレワークの拡大と働き方改革の推進の象徴として、脱ハンコへの取り組みが注目されています。実際にさまざまな府省ではすでにハンコの廃止に踏み切っており、多くの人の関心を集めていますが、脱ハンコの取り組みは現在多くの企業において課題とされているDXの実現にも直結します。そこで今回の記事では、脱ハンコとDXをテーマに、政府の狙いや企業が今後生き残っていくためのヒントも解説していきましょう。

急速に進む「脱ハンコ」の流れ

新型コロナウイルスの影響により緊急事態宣言が発出された2020年、テレワークを開始する企業が増え、さらに緊急事態宣言が解除されてからも継続する企業は少なくありません。そんななかで問題となったのが、書類にハンコをもらうためだけに出社せざるを得ない仕事の進め方です。いわゆる「ハンコ出社」は、テレワークを阻害する大きな要因として問題視されました。

これは政府が推進する働き方改革にも逆行するものであり、ハンコ出社を改善するため、政府は「脱ハンコ」に向けて具体的に動き出しました。2020年9月、政府は全府省に対して行政手続きにおけるハンコの原則廃止を要請し、実際に府省では脱ハンコに向けて事務手続きの見直しを行いました。これにより、例えば日本年金機構では実際に押印を廃止する方向で動いているほか、国税庁も確定申告などの手続きにおいて押印を不要にする意向を示しています。

脱ハンコを進める政府の狙いとは

そもそも政府が脱ハンコを推進するようになった背景には、いくつかの理由があります。冒頭でも紹介したように、直近の課題である新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、社会問題となったハンコ出社をなくしたいという狙いが1つ、そしてもう1つは、働き方改革を実現するためにDXを推進していく狙いが挙げられます。

DXを実現するためには、ペーパーレス化やFAXの廃止など、紙を使った業務を削減し、場所にとらわれない働き方へ変革していく必要があります。これはテレワークの実現とも共通する部分が多く、脱ハンコはペーパーレス化やFAXによる書類のやり取りを廃止するうえで大前提となる取り組みといえるのです。

そして、もっとも重要なのは脱ハンコそのものが最終的な目的ではなく、あくまでも本丸はDXの実現であるということです。しかし、DXの重要性が叫ばれているなかでも本気で取り組む企業はまだまだ少ないのが現状です。

DXを推し進める政府の施策

政府はDXを推し進めるために、さまざまな具体的施策を検討しています。

なかでも目玉となっているのが、「デジタルガバナンス・コード」の策定です。デジタルガバナンス・コードとは、企業がDXを自主的に進めることを促すために、実践すべき事柄を取りまとめたもの。「ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」「ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策」「成果と重要な成果指標」「ガバナンスシステム」の6つの柱からなり、項目ごとに認定基準を設けています。デジタル社会に対応した経営ビジョンやビジネスモデルの実現に向けて設計することが、デジタルガバナンス・コードの基本的な考え方といえます。

さらに、DXを推進する準備が整っていると判断される企業を国が認定する「DX認定制度」もスタートしました。これは2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づき開始された認定制度で、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が審査を行い、経済産業省が認定を行います。デジタル技術が自社の競争環境にどのような影響を及ぼすかを認識し公表しているかが主な認定基準となり、そのうえで経営ビジョンや戦略を立てる必要があります。

もう1つの具体的な施策としては、DXに取り組む企業を経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄2021」があります。これは東京証券取引所の上場企業に対して実施した調査のなかから、DXを積極的に推進している企業を選定するもので、政府はデジタルガバナンス・コードと連動する施策として位置付けています。

また、政府はDXを進めようとしない企業の覚醒を待つのではなく、「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」という個人向けの取り組みも開始しています。コロナ禍における学び直しの機運が高まったことを活用し、意欲のある個人の教育に力を入れて底上げし、DXをとにかく一歩でも前に進めようとしはじめたことも経済産業省の狙いだと考えられるでしょう。

リカレント教育とe-Learningについてのこちらの記事もご参照ください。「DX人材を目指すうえで重要なリカレント教育とは?社会人におすすめのe-Learningシステムを紹介

脱ハンコとDXが進む社会で企業と労働者が生き残っていくために

脱ハンコから始まるDXへの本格的な移行は、今後も一層加速していくと予想されます。各府省が脱ハンコに舵をきったということは、今後その流れは確実に官から民へ移行してくるでしょう。このとき、国や自治体などの動きを待ち、DXの対応は後回しにするのか、いち早く時代の流れを読んでDXへ対応するのか、企業の判断は分かれるところです。

DXの実現に欠かせないITの分野は変化が激しく、数年ごとに新たなトレンドや技術が生まれてくることも珍しくありません。多くの企業がITを活用した業務効率化に着手するようになると、企業間の競争は一層激しくなり、気付いたときには他社と大きな差がついていることも考えられます。そのときになってから慌ててDXに舵をきるようではすでに遅く、競争に取り残されてしまう可能性も高いのです。

そのため、企業が今後取り組むべきこととしては、他社に先駆けていち早くDXを実現することが求められます。ITを活用して業務効率化を図ることはもちろんですが、さらに一歩進んでビジネスモデル自体を変革するチャンスでもあります。脱ハンコとペーパーレスの取引が実現されるようになると、取引先への訪問や契約もすべてが対面である必要はなくなってきます。新型コロナウイルスによってビデオチャットでの打ち合わせが増えていますが、これを営業にも取り入れることで商談数は倍増し、契約数の増加も見込めることでしょう。

もちろん、取り扱う商材によってはこのような営業手法が難しいケースも考えられます。しかし、例えば不動産業界においては、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった新たなテクノロジーを活かし、現地に足を運ばなくても臨場感のある体験を可能にする手法が採用されています。DXは特定のIT技術だけで実現できるものではなく、これまで自社で培ってきた事業のノウハウと最新のIT技術を取り入れることで初めて実現できるのです。

いち早く改革を進めDXを実現することが企業に求められている

新型コロナウイルスの影響によってテレワークが増え、脱ハンコは象徴的な取り組みとして注目されました。特にテレビや新聞、雑誌などのメディアでセンセーショナルに報道されたこともあり、多くの人は「今後ハンコはなくなるのか」という一点に注目しているようです。しかし、政府の目的はあくまでもDXの実現であり、「脱ハンコ」はDXを実現するうえでの第一歩にすぎません。

企業は政府の働きかけを受けてから受動的に動くのではなく、政府が何を目指しているのかを読み解き、自ら改革を進めていくことで他社との差別化や競争力アップにつなげられるはずです。また、DXの実現のためにいち早く計画を立てて行動に移すことで、政府が提供するさまざまな制度も有効的に活用できることでしょう。DXに対する積極的な姿勢や取り組みは、今後多くの企業に求められる重要なポイントになります。

 

参考:

関連記事