DX人材の礎となるか?GIGAスクール構想から見る日本の未来

DX人材の礎となるか?GIGAスクール構想から見る日本の未来

少子高齢化に伴い労働力が著しく低下しているほか、昨今では高度なITスキルを持ったDX人材の確保も企業にとって重要な課題となっています。政府もこのような問題を認識しており、次世代の人材を育成するためにGIGAスクール構想と呼ばれる取り組みが行われています。

今回の記事では、そもそもGIGAスクール構想とは何なのか、これによってどのような人材が育成され、将来の日本はどう変わっていくのかも含めて詳しく解説します。

GIGAスクール構想の目的と背景

まずは、そもそも「GIGAスクール構想」とは何なのか、その目的と本質を紹介するとともに、なぜ今のタイミングでGIGAスクール構想が打ち出されたのかについても見ていきましょう。

GIGAスクール構想の目的

文部科学省ではGIGAスクール構想を「子供たち一人ひとりに公正に個別最適化され、資質 ・ 能力を一層確実に育成できる教育ICT環境」を実現することと定義しています。

「1人1台の端末」および「高速ネットワークを整備すること」をGIGAスクール構想の本質であると誤解しているケースも多いですが、これらはGIGAスクール構想を実現するための手段のひとつであり、本来の目的ではありません。

上記の定義においては、「1人1台の端末」および「高速ネットワークを整備すること」は「教育ICT環境」の整備にすぎず、「公正に個別最適化され、資質 ・ 能力を一層確実に育成」することがGIGAスクール構想の本来の目的であり、本質ともいえるのです。

GIGAスクール構想が打ち出された背景

では、なぜ今のタイミングで政府はGIGAスクール構想を打ち出したのでしょうか。

このような方針が打ち出された背景には、AIをはじめとしたテクノロジーの急速な成長が挙げられます。AIやIoTといったテクノロジーの普及によって、将来的に人間の仕事が奪われるのではないかといった懸念が挙げられています。そのような時代を生き残っていくためには、人間ならではの創造性を身につけ、変化を前向きに受け止められる資質や能力を身につけることが求められるのです。

これを実現するためには、従来のような教育方法ではなく、公正に個別最適化された教育に転換していくことが重要です。

「公正に個別最適化され、資質・能力を一層確実に育成できる教育」とは何か

文部科学省がGIGAスクール構想の定義として挙げている「公正に個別最適化され、資質・能力を一層確実に育成できる教育」とは具体的にどのような意味なのでしょうか。GIGAスクール構想を正しく理解するためには、この意味を押さえておかなければなりません。そこで、「公正に個別最適化された教育」と「資質・能力を一層確実に育成できる教育」の2つのポイントに分け、それぞれの意味を深掘りしていきましょう。

「公正に個別最適化された教育」とは

そもそも、従来の教育においても公正さは大前提といえるポイントでした。

例えば、同じ教室で同じ授業を受け、同じ試験問題を解き採点することで、児童や生徒の理解度を正確かつ公正に確認できます。また、指導する教員は、児童および生徒に対して公正な立場で接することも重要です。従来の教育現場では、このような画一的な指導が「公正な指導」と認識されていたのです。

しかしながら、児童や生徒の能力や資質、特性が異なっているという前提で考えると、必ずしも従来の教育が公正なものであったとはいえません。すべての児童や生徒が、各個人の教育的ニーズに合わせて個別に学習でき、誰一人取り残されることなく成長できる教育の場を与えられることが「公正な指導」と考えることもできるのです。すなわち、「公正に個別最適化された教育」というのは、児童や生徒個人の理解度や特性に合わせて、学び方を変えることを意味します。

「資質 ・ 能力を一層確実に育成できる教育」とは

もう1つの要素である「資質 ・ 能力を一層確実に育成できる教育」とは、創造性を身につけることが挙げられます。

例えば、知識を暗記したり、公式に沿って計算問題を解いたりする問題だけではなく、予測不可能な問題や正解のない問題に対して自分なりの考察を行う学習が考えられます。ときには、自分ひとりの知識やアイデアだけでは解くのが難しい場合もあるため、グループやチーム内の児童や生徒とディスカッションを重ね、さまざまな意見を取り入れたりする方法もあるでしょう。

GIGAスクール構想によってどのような人材が育成できるのか

GIGAスクール構想が実現されると、個人に対して最適化された教育が可能となります。その結果、授業についていけない児童や生徒が減り、学習の理解度を底上げできると考えられるのです。さらにもう一点、重要なポイントとしては、創造性のある人材を育成できることが挙げられます。

従来の教育のように画一的な知識を身につけるだけではなく、さまざまな人の意見や考え方を取り入れたり、自分なりに試行錯誤しながら問題を解いたりすることで視野が広がっていきます。

これからの時代は、テクノロジーの発達によって従来とは比べ物にならないほど変化のスピードが加速していきます。これは一見するとメリットばかりのように感じられますが、これまでは予想もしなかったことが新たな問題として浮上してくる可能性もあることを意味しています。これまでの歴史を振り返ってみても、例えばインターネットが登場したとき、多くの人が世界中のあらゆる情報に簡単にアクセスできるようになりました。しかし一方で、情報セキュリティの問題が浮上し、個人情報や機密情報について厳格な取り扱いが求められるようになったことも事実です。今後AIやIoTが社会に普及していくと、さらにセキュリティ対策の難易度は高まり、テクノロジーやシステムに精通した人材が求められるようになるでしょう。

困難な課題を解決していくためには、正解が決まっている問題をいち早く解決できる力よりも、創造性を持ちイノベーションを起こしていく力が重要となるのです。現在、多くの企業においてDXへの取り組みが行われるようになりました。テクノロジーを活用した事業の変革や新規事業の創出にあたっては、創造性のある人材が企業にとって不可欠となります。そのような意味で、GIGAスクール構想は、将来の日本を支えるDX人材育成の礎ともいえる施策なのです。

DX人材育成の鍵を握るGIGAスクール構想

今回紹介してきたように、GIGAスクール構想は単に教育現場へICT環境を整備することが目的ではなく、児童や生徒一人ひとりの資質や能力を最大限伸ばすことが本質といえます。

多くの企業においてDXへの取り組みが遅れている大きな理由として、テクノロジーの活用方法が見いだせていないことが挙げられます。その背景には、従来の学校教育が「公正に個別最適化」されておらず、創造性を持った人材教育に不向きであったことが1つの要因として考えられるでしょう。

日本全体のDXを促進していくためには、創造性を持った人材の力が不可欠であることはいうまでもありません。従来の学校教育の課題を解決し、GIGAスクール構想によって次世代の教育が定着すれば、DXを実現できる資質や能力を持った優秀な人材が多く誕生すると考えられます。

 

参考:

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