DX格付とは?制度開始の背景と期待される効果について

昨今のビジネスの現場では、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)という言葉が頻繁に飛び交うようになりました。デジタル技術によって経営そのものを革新し、根底からビジネスのあり方を変えることは、今後も企業が生き残っていくうえで必要不可欠です。

しかし、企業によってDXの取り組み方は異なるもの。そんな状況をふまえ、経済産業省が主導する「DX格付」という制度が2020年度から実施されることになりました。DX格付とは何か、どのような効果が得られるのかについて詳しく解説します。

DX格付とは?

DX格付とはその名のとおりDXに取り組む企業を格付けする制度で、経済産業省が2020年度中のスタートを予定しています。

DX格付は第三者が事業者のDXに対する取り組みの実態を評価し、最終的には評価者の結果をもとに国が判断を行ったうえで格付けや優良認定を決定します。投資家や取引先などが企業ごとのDX取り組み状況を客観的に把握できるようになり、結果として企業の成長につながることが期待されています。

また、DX格付では2〜3年に一度の頻度で格付の見直しを実施することが検討されており、時代の変化に対応しながら常にDXの取り組みに積極的な企業が認定されるようになります。格付のレベルは3段階に設定する案が検討されており、たとえば上位10%が「ゴールド」、上位20%が「シルバー」、上位30%が「ブロンズ」といった形です。

産業のデジタル化を取り巻く状況は日進月歩で進化しており、数年前のテクノロジーが使えなくなってきたり現実的ではない手段になっていることも珍しくありません。そのため、事業者に対するDX格付の認定だけではなく、格付レベルの基準も数年おきに見直す案が検討されています。

DX格付が検討されている背景

そもそも、なぜDX格付の制度が検討されるようになったのでしょうか。単にデジタル化の波に乗るというだけではなく、その裏にはさまざまな理由があるのです。今回は主にふたつのポイントについて見ていきましょう。

(1)守りのIT投資から攻めのIT投資へ

世の中はデジタル化が進み、先進的なテクノロジーが活用されていると考えられがちです。しかし、実は多くの企業には、いまだに旧型のシステムが残存しており、DXの実現にはほど遠い現状があります。

経済産業省の報告によると、企業のIT関連予算の実に8割以上が、現行システムの維持管理に使用されていることがわかっています。これは企業の成長に向けた「攻め」のIT投資ではなく、現行のシステムをとりあえず維持して活用する「守り」のIT投資であるといわざるをえません。

デジタル化による経営改革が進まない場合、業務効率や生産性向上が見込めず、時代遅れと化したシステムの維持管理コストも増大し続けると考えられています。短期的な目線に沿った計画でITシステムを構築していると、システム自体が複雑化・ブラックボックス化してしまい、いずれシステムの維持に莫大なコストがかかってしまいます。

現状のままでは、システム管理にかかるコストが経営を圧迫し、企業の成長が止まってしまうリスクがあるのです。

(2)新規事業創出による国際競争力の向上

新たなビジネスモデルの創出につなげ、グローバル化が進むなかで国全体の競争力を上げるためには、あらゆる産業においてデジタル化に積極的に取り組む姿勢が求められます。

経済がグローバル化した今は、多くの企業が経営戦略を見直し、組織や人材活用、ITシステムなどを抜本的に変えていかなければならない時代です。とりわけ国際競争力を高めていくためには、従来のように日本国内だけを見すえるのではなく、世界を見すえた広い視点や考え方が求められるでしょう。特に競争力を高めるためには、これまでになかったような新たなサービスや商品を創出するのが効果的とされています。

このような革新的な新規事業の創出においては、デジタル化の考え方が欠かせません。さまざまな企業がつちかってきた独自のノウハウを最新のテクノロジーと組み合わせることによって、多様な化学反応が起こり、世界で戦える事業が誕生するかもしれません。「デジタル化」や「IT化」と聞くとIT産業だけに特化したものと考えられがちですが、今後はあらゆる産業にとってデジタル化が重要なキーワードになります。

そのため、2019年10月に改正された情報処理促進法では、経営戦略のなかでどのようにITシステムを活用すべきか、その指針を国が策定する「デジタルガバナンスコード」も取り入れられました。同時に、これを第三者の目で客観的に評価し、誰もが企業ごとの状況をひと目で把握できるようにする施策として「DX格付」が考案されたのです。

DX格付によって得られる効果

DX格付によって企業や社会全体にどのような効果が期待できるのでしょうか。3つのポイントを挙げて解説します。

(1)DX実現のために本気で向き合う企業が増える

DX格付によって公開される情報は、株主や投資家がその企業に対して新たに投資をするか、投資を継続すべきかといった重要な判断材料になります。DX格付は企業が将来を見越してデジタル化をどのように考えているかの指標であり、その企業が今後も成長していけるかを見極める要素になりえるでしょう。DX格付が投資の判断材料となることによって、多くの企業は本気でDXへ向き合い、旧型のシステムを刷新し、デジタル化に向けて取り組むことが期待されます。

(2)優秀な人材の確保

DXに積極的に取り組む企業には高い将来性に期待して、優秀な人材も集まりやすくなります。すでにベンチャー企業やスタートアップ企業のなかには、テクノロジーを駆使して労働環境を劇的に改善している事例もあります。魅力的な企業には国内外からさまざまな人材が集まってくるでしょう。

戦後続いてきた日本的な終身雇用制度が崩壊した今、優秀な人材ほどより良い企業への転職を実現している傾向があります。優秀な人材を確保するためには、企業も積極的に変わっていく姿勢を見せなければならないといえるでしょう。

(3)革新的なビジネスの創出

優秀な人材が豊富にいるとさまざまなアイデアが生まれ、それを形にしていくことも容易になるでしょう。さまざまな人材とDXによってもたらされるITシステムによって、これまでにないビジネスのイノベーションが生まれ、企業だけではなく社会全体の成長にもつながっていきます。

魅力的なサービスや商品が生まれると企業価値も向上し、より良い労働条件を実現できるようにもなります。DXは会社と労働者、さらには社会全体において成長の好循環を生み出す大きな要因になることが期待されているのです。

DX格付にはDXそのものを促進する役目も

これからの時代はDXが重要だとわかっていても、企業によって取り組みへの熱意の度合いは異なるものです。DX格付が投資判断の材料となることで、多くの企業がより本気でDXに取り組むことが想定されています。企業という単位での成長はもちろんですが、グローバル化が進む社会全体にとってもDXは必要不可欠な考え方です。より活発なイノベーションを促進していくためにも、DX格付の制度は大いに期待されています。

 

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