DX推進に向けて参考にしておきたい「2021年度税制改正大綱」の概要

DX推進に向けて参考にしておきたい「2021年度税制改正大綱」の概要

2020年12月21日、政府は2021年度税制改正大綱について閣議決定を行いました。新型コロナウイルスの感染拡大によって甚大な影響を受けた経済を立て直すため、さまざまな措置や特例が創設されたのが大きな特徴といえます。また、もう1つの大きなポイントとして、現在多くの企業において取り組みが始まっているデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための措置も設けられています。

今回の記事では、2021年度税制改正大綱の概要について紹介するとともに、DXに関連した税制改正項目のポイントについても解説します。

2021年度税制改正大綱の概要

財務省が公開している「令和3年度税制改正の大綱の概要」では、「個人所得課税」「資産課税」「法人課税」「消費課税」「国際課税」「東日本大震災からの復興支援のための税制」「納税環境整備」「関税」の8項目にわたって税制改正大綱の概要がまとめられています。

今回の税制改正大綱では、従来の課題である少子化対策や経済成長に向けたさまざまな対策のほか、2020年に感染が拡大した新型コロナウイルスによる影響に伴い、特別措置が設けられた税制項目も複数ありました。

加速するDXを反映した税制改正

2021年度税制改正大綱の大きな特徴としては、新型コロナウイルス対策に関連した税制改正以外にも、DXを加速させるためのさまざまな項目が取り入れられたことが挙げられます。

特に法人課税と納税環境整備の項目においてはDXと関連性の深い税制改正項目が多い傾向が見られ、法人課税に対しては「DX投資促進税制の創設」や「活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し」などが、納税環境整備に対しては「電子帳簿等保存制度の見直し等」「地方税共通納税システムの対象税目の拡大」などが関連項目として挙げられます。

DXと関連性の深い法人課税項目

2021年度税制改正大綱のなかでも、特にDXとの関連性が深い法人課税項目について詳しく解説します。

「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設」

法人課税項目のなかでは、特に「産業競争力強化に係る措置」として「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設」があり、これはクラウドシステムの活用などによってデジタル環境を整備した場合、3%・5%の税額控除、または30%の特別償却を可能にする措置です。

現在、多くの企業で働き方改革やアフターコロナにおける新しい働き方を実現するための手段として、テレワーク環境の整備が求められています。しかし、中小企業を中心としてデジタル時代に対応した執務環境の整備が進んでおらず、テレワークに対応できない企業が多いことも事実です。

オフィスという場所にとらわれない働き方を実現することはBCP(事業継続計画)としても有効であり、企業の産業競争力強化にもつながります。今回の税制改正大綱では、テレワークに不可欠なクラウドツールをはじめとしたシステムの導入を促進し、企業のDX実現への足がかりとする狙いがうかがえます。

「活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し」

上記で紹介した「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設」は、クラウドシステムを導入する側、つまりユーザー企業が税制の恩恵を受けられる仕組みとなっています。しかし、企業における一層のDXを促進するためには、自社独自のシステムを開発・導入する場合の支援も不可欠です。

そこで、「活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し」として、クラウド環境に対応したソフトウェア開発の研究に対して、研究開発税制の適用対象とすることとしました。また、研究開発投資を増加させた企業の税額控除の上限を現行の25%から30%に引き上げるとともに、インセンティブを高めるための控除率の下限も現行の6%から2%へ見直します。

さらに、赤字のなかでもDXや新規事業の再構築といった前向きな投資を行った場合、最大5年間にわたって繰越欠損金の控除限度額を最大100%に拡充することも決定しています。コロナ禍によって苦しい経営状態が続く企業も多いものの、このような時代だからこそ将来につながる積極的な事業体制の構築を支援する狙いがうかがえます。

納税環境整備にもDX化の波

2021年度税制改正大綱では、法人課税のほかにDX化に向けた税制改正の対象として納税環境整備も挙げられています。

「電子帳簿等保存制度の見直し等」

納税環境整備では「電子帳簿等保存制度の見直し等」によって、経理の電子化に対応します。

具体的には、帳簿書類をデータとして保存する際の手続きの見直しや、スキャナ保存制度の手続きおよび要件の大幅緩和を実施するとしています。これにより、新型コロナウイルス感染症対策および働き方改革の一環として求められているテレワークを推進するほか、クラウド会計ソフトの活用水準を向上させる狙いがあります。

従来、帳簿書類のアナログな管理手法がテレワークの推進を妨げる一因となっていました。そこで、これまでのような納税環境整備の手法をデジタルに置き換え、オフィス以外の場所でも帳簿書類の管理ができるようにルール変更をすることで、企業および官公庁も含めてDX化を加速していきます。

「地方税共通納税システムの対象税目の拡大」

2019年10月より「地方税共通納税システム」によって地方税を電子手続きによって納付する仕組みが構築されています。この共通納税のシステムによって納付できる税目は「法人都道府県民税」や「法人事業税」、「特別法人事業税」など6項目におよびますが、今後はさらに「固定資産税」や「都市計画税」、「自動車税種別割」、「軽自動車税種別割」を追加する予定です。

さらに、企業に勤める会社員などは特別徴収によって住民税が給与から天引きされていますが、従業員に対して住民税額を通知する際、これまでは書面による発行および通知が一般的でした。今後は、企業などの特別徴収義務者の希望により決定通知を電子的に送付できるようになります。DXやテレワークの一環としてペーパーレス化を推進する企業も多いですが、そのような時代の流れに対応した取り組みといえるでしょう。

企業と行政で進むDX化の波に対応した2021年度税制改正大綱

今回紹介してきたように、2021年度税制改正大綱には新型コロナウイルス対策はもちろんですがDX化の波が大いに反映された内容となっています。新型コロナウイルスの影響によって経営に甚大な影響がおよんだ業種や企業も多いですが、このような時代だからこそアフターコロナを見据えた次世代への投資や取り組みを前向きに検討していく必要があることも確かです。

また、納税環境整備の項目にもあるように、行政自らも積極的にDXを目指す姿勢がうかがえます。今後、DX化の波は官から民へ波及してくる可能性は大きく、大企業だけではなく中小企業においてもDXへの取り組みは極めて重要となるでしょう。

DX化に向けての具体的な取り組み内容は企業によっても異なりますが、まずはできることから少しずつ着実に実行していくことが重要です。自社における業務上の問題点や課題をピックアップし、具体的にどのようなツールやシステムが最適なのかを検討してみましょう。


参考:

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