あれから2年 DXの取り組みはどれほど浸透したのか?

あれから2年 DXの取り組みはどれほど浸透したのか?

2018年に経済産業省がDXレポートを発表してからすでに2年が経過しました。現在ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が広く社会に浸透し、DXに積極的に取り組む企業も増えています。しかし、ビジネス業界においてDXはトレンドとなっているものの、実際にどの程度までDXは実現できているのでしょうか。

今回の記事では、2020年12月に経済産業省から発行された「DXレポート2」から、これまでのDXの変化と、企業が抱えている現状の課題についても考察してみます。

大半の企業がDXに未着手または取り組み不足

2020年5月に情報処理推進機構(IPA)が公開した「DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート」によると、全企業におけるDX推進の自己評価は平均値で1.45となっています。この指標はレベル0〜5までの段階に分かれており、5点満点のうち1.45という数字は極めて低いといえるでしょう。

企業規模別に全体の傾向を見てみると、従業員数1,000名以上の大企業の平均値が1.50、100名以上1,000名未満の中規模企業の平均値が1.24であるのに対し、100名未満の小規模企業においては0.74と大幅に低いことが分かります。この背景としては、DXに対して投資できるほどの資金的な余裕がないケースや、事業規模が比較的小さいこともありDXに取り組む十分なメリットが見いだせていない、などの理由が考えられます。

ちなみに、それぞれのレベルに対応した指標の基準としては、レベル0は「未着手」、レベル1は「一部での散発的実施」、レベル2は「一部での戦略的実施」、レベル3は「全社戦略に基づく部門横断的推進」、レベル4は「全社戦略に基づく持続的実施」、レベル5は「グローバル市場におけるデジタル企業」となっています。

上記の分析レポートにおける自己評価は、全体の9割以上にあたる企業がレベル3以下となっているほか、レベル2以下の企業も全体の半数以上を占めています。このことからも、日本における多くの企業ではDXの途上段階にあると考えられるのです。

誤解されがちなDXの本質

DXにはさまざまな定義がありますが、日本では2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」が多くの企業に参照され、取り組みが行われています。特にこのDXレポートのなかでは「レガシーシステムからの脱却・刷新」というキーワードが大いに注目され、これこそがDXの本質であると認識した方も少なくなかったはずです。

しかし、その結果「レガシーシステムの刷新が実現できていて競争優位性が確保されていれば、DXへの取り組みは不要である」と誤解されているケースもあるのです。例えば、COBOLのようにレガシーな言語で実装されたシステムを、Javaで実装された新たなシステムにマイグレーションしただけで本当にDXが実現できたといえるのでしょうか。さらに身近な例でいえば、フロッピーディスクからUSBメモリやCD-ROMに置き換えただけでDXが実現できたといえるでしょうか。当然のことながら、両者ともに答えは「NO」でしょう。

DXの本質とは、単にレガシーシステムから物理的に脱却すればよいということではありません。フロッピーディスクの例でいえば、確かに現在でもUSBメモリやCD-ROMは活用されています。しかし、時代とともに記憶媒体は変化し続けており、現在は物理的な媒体よりもクラウドシステムの活用が主流となっています。クラウドシステムに乗り換えることそのものがDXの本質ではなく、今後の技術革新によってはさらに新たなソリューションが誕生し、それが新たなトレンドになっていくと考えられるのです。

DXの考え方としてもっとも重要なのは、一度システムやツールを刷新したからといって、それをゴールとして認識するのではなく、デジタル時代の到来と社会の変化に常に対応し続け、企業文化も含めた変革が必要ということです。そして、それこそがDXの本質であり、単なるシステム刷新ではないがゆえに企業にとって極めて大きなテーマといえるでしょう。

コロナ禍で浮き彫りになったDXの重要性

2019年に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大によって、社会のあるべき姿や人々のライフスタイルは大きく変化しました。人々のコミュニケーションは対面からオンラインに移行し、多くの企業においてリモートワーク(テレワーク)での業務が求められるようになりました。2020年の春以降、初めてリモートワークを経験した人や、慣れないオンライン会議に苦労した人も多かったのではないでしょうか。

また、社員にとっての働き方だけではなく、ビジネスモデルそのものもコロナ禍によって変革が求められるようになりました。例えば、対面による接客や店頭販売からオンラインへの移行はもちろん、書類への押印からペーパーレス化への移行、オフィスワークからリモートワークへの移行による賃貸オフィス物件の需要低下など、コロナ禍の影響で求められている変化はDXと共通する要素も少なくありません。

DXとは「デジタル時代の到来と社会の変化に常に対応し続け、企業文化も含めて変革していくこと」と紹介しました。しかし、「企業文化も含めて変革していくこと」というポイントが具体的にイメージできず、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この部分を理解するためには、コロナ禍による企業の変化そのものに着目すると分かりやすいはずです。

例えば、「対面による接客や店頭販売からオンラインへ移行した」というのはDXへの取り組みの本質を表しています。従来のやり方を踏襲することは確かに業務が進めやすく無難な方法といえるでしょう。しかし、デジタル社会においては人々のニーズや価値観が変化するスピードも速く、従来の方法のままでは対応しきれないことも出てきます。「現在のビジネスモデルややり方がこの先もずっと続いていく」という考え方ではなく、常に変化を受け入れ挑戦し続ける姿勢こそが重要なポイントです。

このように、コロナ禍は社会のあり方を大きく変えつつありますが、見方によっては「半ば強制的にDX化が進んでいる」と考えることもできるでしょう。

企業が変わり続けるために重要なこと

ここまでに紹介してきたように、物理的なシステムの刷新やITツールの導入をDXの本質ととらえ、それ自体をゴールと認識しているケースも少なくありません。しかし、DXは仕事の進め方やビジネスモデルも含めて、企業文化そのものを刷新していくことがもっとも重要なポイントといえます。

変化の激しいデジタル時代において、企業側が柔軟に対応していける体制が構築されていないと競争力が確保できず、それ以上の成長が見込めないといっても決して過言ではありません。

実際に、コロナ禍によって変化に対応できる企業とそうでない企業の差は顕著に現れてきています。企業としてDXを加速させていくためには、DXを推進するための体制作りはもちろんですが、DX人材の育成および採用を積極的に行うことも極めて重要な取り組みといえるでしょう。

また、DXは特定の部署や担当者レベルに任せて実現できるものではなく、組織全体で横断的に進めていく必要があります。そのためにも、経営層に旗振り役となる人材を設け、全体を統括することも検討してみましょう。

 

参考:

関連記事