キャッシュレス決済を知る!その概要とデータ活用のためのポイント

クレジットカードやデビットカードのほか、ここ数年でSuicaやnanaco、PayPay、メルペイなどさまざまな種類の電子マネーが増加。日本でもようやくキャッシュレス決済が普及のきざしを見せています。特に2019年10月の消費税増税を機に、キャッシュレス決済によるポイント還元制度が始まったことで、普及が加速しているといえるでしょう。企業側としても、集客施策になるとともに、利用者のデータを収集できることで新たな販促につながるといった期待もあります。今回は、注目のキャッシュレス決済の概要から、データ活用できることのメリット、活用のために必要なことについて考察していきます。

国が主導となり進められているキャッシュレス決済

最初に、キャッシュレス決済に関する定義や背景についておさえておきましょう。

キャッシュレス決済の中身を知るにあたって便利なのが、2019年4月に一般社団法人キャッシュレス推進協議会が公開した「キャッシュレス・ロードマップ2019」です。これによると、キャッシュレスとは「物理的な現金(紙幣・硬貨等)ではなく、デジタル化された価値の移転を通じて活動できる状態」と定義されています。また、実際の決済について同資料では、2017年の段階で支払額は60兆円超で、民間最終消費支出の21.3%を占める、としています。

これに加えて、株式会社富士キメラ総研による「キャッシュレス/コンタクトレス決済関連市場調査要覧 2019」を参照すると、2019年のキャッシュレス決済市場は、決済金額ベースで88兆2,539億円と見込まれているうえ、2025年には165兆円に達すると予測。これにより、2025年の家計最終消費支出全体におけるキャッシュレス決済比率は2019年の28.9%から50.8%にまで増加すると予想しています。

これだけを見るとキャッシュレス決済は急速に普及を続けているように見えますが、世界各国との比較で見ると日本はまだまだキャッシュレス決済後進国です。一般社団法人キャッシュレス推進協議会の「キャッシュレス・ロードマップ 2019」によると、2015年の段階ではありますが、この時点で日本のキャッシュレス決済比率は18.4%。これに対しアメリカが45.0%、中国は63.9%、そしてもっとも決済比率の高い韓国では89.1%と、ほぼ9割が現金以外での決済を行っていることがわかります。

そこでさらなる普及を目指し、経済産業省が主導となって推進を行っているのが、2019年10月の消費税増税にあわせて開始されたキャッシュレス・ポイント還元事業です。この事業では、2019年10月から翌2020年6月までの間、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコードといった電子決済手段を用いて商品購入を行った場合、最大で5%の還元を行うというものです。また、企業に対しても、キャッシュレス決済用の端末本体と設置費用などを補助金により無料にしたうえ、決済手数料の一部を国が補助するといった施策を行っています。

日常的に利用されるようになったキャッシュレス決済の種類

では、実際に利用されているキャッシュレス決済にはどういった種類があるのかについて見ていきます。現在、キャッシュレス決済は大きく分けて「接触型(差し込み式)」「非接触型(タッチ式)」「コード型」の三つがあります。

  • 接触型(差し込み式)

クレジットカードやデビットカードでの決済方法です。それぞれのカードの接点を端末のリーダーに差し込む、もしくはスライドさせることでデータを読み取り支払いをします。

クレジットカードはVISAやアメリカンエキスプレスなど全世界共通のため、海外からの観光客対策としても有効です。しかし、他の決済手段に比べ、端末費用が高額で特に個人店舗では導入の敷居が高いというデメリットもあります。

  • 非接触型(タッチ式)

SuicaやiD、nanaco、楽天Edyなどでの決済方法です。NFC(Near Field Communication)という近距離通信技術により、端末にカードを差し込むことなく、かざすだけで支払いが行えます。また、この決済方法は、NFC対応のカードだけではなく、モバイルSuicaやLINE Pay、PayPayといったスマートフォンアプリを端末にかざすことでも支払いが可能です。最近ではNFCを搭載し、かざすだけで支払いが行えるクレジットカードも登場しています。

クレジットカードを持っていない若者や少額決済の多いコンビニや小売店では顧客の利便性を上げることができます。しかし、種類が多く店員の負担が増えてしまう場合もあります。

  • コード型

PayPayやd払いなどスマートフォンアプリでの決済方法です。この決済方法は、お店側が提示するバーコードやQRコードをスマートフォンのほうで読み取り、金額を入力するMPM(Merchant Presented Mode)。そして、スマートフォンにバーコードやQRコードを表示させ、お店側が端末で読み取るCPM(Consumer Presented Mode)の二つの方式があります。

他の決済手段に比べ、端末がコンパクトなうえ、導入費用が安くもっとも手軽に導入することが可能です。しかし、店舗側が提示するQRコードが偽造QRコードにすり替えられてしまうといったリスクもあり、セキュリティには十分な注意が必要です。

キャッシュレス決済が実現するデータ活用

現金決済では難しく、キャッシュレス決済であれば可能なものとして、顧客情報の収集が挙げられます。顧客がいつ、何を購入し、いくらお金を使ったのかといったデータが収集でき、これにより無駄のない生産、商品管理、販売促進が可能になるのです。

少子高齢化が進む日本では、15~65歳の生産年齢人口が年々減少を続けており、2015年の7,629万人が2030年には6,773万人、2060年には4,418万人にまで減少すると見込まれています(総務省『情報通信白書平成29年版』)。そのため、業種にかかわらず企業の人手不足対策は喫緊の課題です。この解決策のひとつとして、決済時に収集したデータをさまざまな用途で活用できるキャッシュレス決済の普及は期待が寄せられています。

ただし、ここには問題点もあります。キャッシュレス決済のデータ活用において一番のネックはキャッシュレス決済のデータだけでは十分な活用ができない点にあります。例えば、キャッシュレス決済で何を購入したのかがわかるのは、商品が購入された店舗だけです。決済事業者には購入金額までしか把握できません。

仮に顧客がA店では決まったものしか買わず、それ以外のものは別のB店で購入している場合、データに偏りが生まれてしまいます。もし、A店がB店で購入しているものがわかれば、それにあわせた販売戦略を立てることができますが、自店舗の購入実績しかわからなければ、中途半端な戦略しか立てられません。

こうしたことから、キャッシュレス決済によって得られたデータの効果的な活用ができず、とりあえずデータの収集だけを続けていくと、かえって人的・金銭的なコストがかかり、人手不足対策にもならないというリスクも十分に考えられます。

キャッシュレス決済の本格的なデータ活用はまだ道半ば

キャッシュレス決済普及の大きな障壁のひとつであった導入コストの高さは、コード決済の登場により、かなり軽減されるようになりました。また、一部事業者による手数料ゼロキャンペーンや翌日入金といったサービスができたことも、キャッシュレス決済普及を早める要因になっているといえるでしょう。

キャッシュレス決済が今以上に普及することは、データ収集の面では有利ですが、収集したデータをどのように活用していくか、データ活用のための店舗間での情報共有やフォーマットの統一など、まだまだ解決しなくてはならない課題があるといえます。そういった意味では、キャッシュレス決済によるデータ活用の本格化はまだ道半ばというのが現実です。

もちろん店単位でのデータ活用は可能なため、現金決済では難しかった新たな販促施策の可能性は高まります。しかし、より効果の高い販促につなげていくためには、事業者側と店舗側のこれまで以上の連携と店舗間での情報共有がポイントになるでしょう。 

参考:

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